ネットで注文していた本が届きました。
毎日新聞の書評の無料部分をネットで読み、注文していたものです。
本はすぐたまっていくので普段は図書館で借りるなどして、できるだけ購入しないようにしており、買うにしても通勤ルートにある紀伊国屋で実物をみてから買うことが多いのですが、現在、紀伊国屋も休業中です。
『コロナの時代の僕ら』は素粒子物理学が専門のイタリアの小説家、パオロ・ジョルダーノによるエッセイ集です。
感染症にまつわる27本のエッセイと、著者あとがき『コロナウイルスが過ぎたあとも、僕が忘れたくないこと』が収められています。
素粒子物理の専門家だけあって、本の中にもしばしば数学的なイメージが登場します。
といっても、難しいものではなく、文章は自然で(翻訳が上手?)透明感あふれるものです。
例えば、
『全世界の感染人口は約4万人、犠牲者と回復者を合わせた隔離人口は、それよりも少し多い。
しかし注目すべきはそのどちらでもなく、(中略)
新型ウイルスがまだ感染させることのできる人々は ー 75億人近くもいる。』
とし、アールノート(基本再生産数)についても重要性を分かりやすく示しています。
環境破壊と新型感染症の関係も示唆。
『森林破壊は、元々人間なんていなかった環境に僕らを近づけた。』
『昨年の夏にアマゾン川流域の熱帯雨林で起きた途方もないスケールの森林火災が何を解き放ってしまったか、誰にわかるだろう?』
として、環境破壊により行き場を失った動物などがもつウィルスが、人間に引っ越しするリスクについて指摘しています。
『複数の科学者が同じデータを分析し、同じモデルを共有し、正反対の結論に達する時、そのどれが真理だと言うのだろう?』
これはイタリアの話ですが、テレビで日々流される専門家の議論と同じ状況ではないでしょうか。
読んでいて、ちょっと笑ってしまいました。
ラストのエッセイ『日々を数える』と著者あとがき『コロナウイルスが過ぎたあとも、僕が忘れたくないこと』は、特におすすめです。
『コロナウイルスの「過ぎたあと」、そのうち復興が始まるだろう。
だから僕らは、今からもう、よく考えておくべきだ。
いったい何に元どおりになってほしくないのかを。』
わたしは通勤日数が半分になり、通勤する日も電車が比較的すいているこの状況が、「元に戻ってほしくない」、「これこそ、人間らしい仕事環境かも!」と思っているのですが、そいう行動面だけでなく、考え方の枠組みについて触れています。
『戦争が終わると、誰もが一切を急いで忘れようとするが、病気にも似たようなことが起きる。』
苦しみは真実に触れる機会を与え、物事の優先順位の再考を促し、現在という時間は本来の大きさを取り戻す、と語ります。
そうしたことを、コロナ騒動が過ぎた後も『僕は忘れたくない』のだと。
長々引用しましたが、引用部分に興味を持たれた方は、わたしの引用よりも、まず読んでみられることをおすすめします。
本を注文する前は、126ページとページ数が少なく文字が大きいわりに値段が高い(1,300円+税で1,430円)と思ってしまったのですが、わたしにとっては十分に価値のあるものでした。
目の前の混乱に目を奪われがちだったのですが、ちょっと先のことを考えてみようという気持ちが生まれました。
たぶん、たまに読み返す数少ない本になると思います。
『僕が忘れたくない』と作者が語るさまざまなことを気にとめて、生活していきたいと素直に感じられました。
いま小6のわが子にも、中学生くらいになったら読んで欲しいです。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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