鴻上尚史さんの『親の期待に応えなくていい』を読了しました。
2021年4月に発売されたこの本。
親との関係に悩む中・高生に向けて書かれた本ですが、親世代の私が読んでも、子供たちの気持ちを考え、親としての対応を考えるヒントになったり、昔の自分自身のことを振り返ったりして、とても考えさせられるものがありました。
むしろ親世代に読んで欲しい本かもしれません。
親をがっかりさせたくなくて、期待に応えようと頑張る人は多いでしょう。
ティーンに限らず、20代、30代、40代にも多いかもしれません。
でも、『親を大切にすること』と『親の期待どおりになること』は別の話。
何が幸せかを決めるのは親ではなく子供自身。
そのことを思い出させてくれる本です。
新書で手軽に手にとれ、深い内容を読みやすく書いてくれているので、まだお読みじゃないティーンのみなさんや親世代の方には、ぜひ手に取って欲しい本です。
ということで今回は、鴻上尚史さん著の『親の期待に応えなくていい』の感想を書きます♡
鴻上さんは気になる存在
わたしにとって鴻上さんは、子供関係のトピックに関してとても気になる存在なんです。
10年以上前に、朝日新聞で『いじめられている君へ』という連載がありました。
著名人が『いじめられている』子へ向けてメッセージを書くというものなんです。
鴻上さんも書いてらっしゃり、内容がとても印象に残ったんです。
鴻上さんの、いじめられている君へのメッセージは、『死なないで、逃げて逃げて』というものでした。
いじめられているなら、今日、学校に行かなくていい。
学校に行かない自分を責める必要はない。
大人も、会社が嫌なら会社から逃げている。
死んでもいじめたやつらは、絶対に反省しません。
この世の中は、あなたが思うよりずっと広い。
あなたが安心して生活できる場所が、絶対にある。
端折って書くと、このような内容でした。
(*全文は朝日新聞デジタルで読めます→朝日新聞デジタル:いじめられている君へ - 教育)
当時、ここまではっきり『逃げていい』とか『いじめたやつらは反省しない』とか書いた人は少なかったと思います。
その頃、仕事でいじめ加害者の子と話をする機会があったのですが、いじめは複数で加害行為をするせいか、私が話した子は、本当に反省はしていませんでした。
もちろん全員がそうではないでしょうが、その加害者の子は、むしろいろいろ聴かれて面倒、自分の方こそが被害者、というような対応だったのを覚えています。
人生相談の回答にしてもそうですが、鴻上さんの対人関係をきれいごとで片づけないところが、すごく印象的で私にとっては、とっても気になる存在なんです。
▼『いじめられている君へ』は、さかなクンの文章も秀逸だと思うので、興味のある方は、是非、のぞいてみてください▼
親の期待に応えないことで感じる『罪悪感』の正体
そんな鴻上さんが、意識的にしても、あまり意識していないにしても『親の期待に応えよう』として苦しい思いをしている人に向けて書いたこの本。
いろいろ『おおっ』と思うフレーズがあります。
例えば
『コミュニケーションが得意な人』というのは、『誰とでもすぐに仲よくなれる人』というイメージがありますが、じつは、そうではありません。
コミュニケーションが得意な人とは、『もめた時になんとかできる能力のある人』のことです。
とか
親を100点満点で喜ばす必要はないのです。63点で喜ばすとか、45点ぐらい大切にしてるとかでいいんです。
100点満点で喜ばそうとすると、あなたが無理をして、本当のあなたじゃなくなってしまいます。
『健康的に自立』することが、『親子関係』の最終的な目標なのです。
などなど。
ちなみに、『健康的に自立させる』ことは、『相手のことを知り、相手の状態を考えて、ゆっくりと順調に成長するように計画する』ことと説明さています。
そんな中で、私が一番印象に残ったのが、『親の期待に応えないと罪悪感を覚える』というときの『罪悪感』の正体に関する考察です。
親の期待に応えないとおぼえてしまう『罪悪感』の正体は?
『罪悪感』についてはラストの第5章に記載されており、『世間体』などというときの『世間』と『社会』の日本でのありようが、歴史的経緯をたどりながら説明されていきます。
私のつたない説明よりも、ここは是非、実際に本を読んでいただきたいところですが、結論だけを書くとこんな感じでしょうか(↓)。
本当は、『社会=知らない人たち』『世間=知っている人たち』『家族』が別々に存在し、3つの世界を適度なバランスで生きるのが、快適な生活。
でも、『家族』が本来あってほしい『愛情ルール』ではなく、『世間体が悪い』というような意味合いで使う『世間=人情ルール』に支配されて、『家族=強力な世間』になっているときに『罪悪感』を感じる。
そのとき、子供は親の付属物になっている可能性が高い。
親は年上だからということで、子供は無条件で親のいうことを聞かないといけないと思い込んでしまい(このとき、親は昔の村の長老みたいな存在になっている)、その言葉に逆らうと、一番大切なものを裏切ったような感覚になり、『罪悪感』を覚えてしまう。
おわりに
子供の人生をコントロールしようとするのは、親の『同調圧力』。
親の一番の役割は、子供を健康的に自立させることで、子供はそのために、自分は何が好きで、何がしたくて、何が幸せと思うのか、親にはっきり伝えていい。
自分は子供(中1です)に、『何が好きで、何がしたくて、何が幸せと思うか』を自分自身で考えてそれを表現できる環境をつくっているだろうか?
改めていろいろ考えさせられた本です。
まだ、子供自身はこの本を読んでいませんが、様子をみつつすすめてみようとみようと思ってます♡
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!