先日、『アーネスト・シャクルトンのエンデュアランス号が南極の深海3000メートルで発見される』というニュースをみました。
なんでも1915年に沈没したとのことで、今から実に107年前に海に沈んだ木造船です。
100年以上前だし、木造だし、普通ボロボロになってそうです。
でもなんと、このエンデュアランス号は海底にしっかり直立し、もとのままの姿を保った素晴らしい保存状態!
エンデュアランス号です ↓
画像引用元:CNN Travel, 2022年3月9日
この映像を見たとたん、がぜん興味がわき『そういえば本が出てたよな~』と思って読んだのが、アーネスト・シャクルトン著の『エンデュアランス号漂流記』です。
いままでこの話は、ほぼ知らなかなったのですが、読んでみてびっくりな内容だったので、ご紹介します!
企業人のリーダーシップのお手本書としてもよく読まれているようですが、そういうのとは関係なくても、薄くてすぐに読めてとっても興味深い内容なので、エンデュアランス号発見記念として、ぜひ、まだ読んでない人はチャレンジしてみて下さい♪
南極横断計画を立てるも大失敗
このエンデュアランス号、もともとはシャクルトンが、世界初の南極横断計画を実行するために用意した船でした。
時は第一次世界大戦がはじまるちょっと前、1914年8月1日、エンデュアランス号は探検隊を乗せて、ロンドンを離れました。
すでにアムンセンとスコットによって、1911年から12年にかけて南極の極点が踏まれた後で、南極大陸横断が次の大きな探検目標としてクローズアップされている時期でした。
シャクルトンは隊長として沢山の資金を集め、準備万端でロンドンをたち、最後の寄港地であるサウスジョージア島を12月に出発するのですが、ウェッデル海の浮氷にとじこめられてしまい、船が身動きがとれなくなってしまいます。
南極大陸横断どころか、南極の大地も踏めないままえらいことになってしまったんです。
南極大陸にたどり着けないまま大漂流
翌年の1月中旬、エンデュアランス号は流氷に囲まれて身動きとれなくなり、進むことも戻ることもできなくなってしまい、そのまま流氷に囲まれた状態で数か月漂流します。
このあたりを読んでるとき、氷が薄いうちに船で粉砕して進めばいいのに、と思ってしまったのですが、なにせ100年前の木造船。
そんな力はなかったようです。
氷とともに北へ、静かに船は流されていきます。
そして9月に南半球の春が訪れると、割れた氷が船に強い圧力をかけ、海水がしみ込んできます。
沈没寸前のエンデュアランス(直訳では『忍耐』)号
船がいよいよヤバくなってきたので(このあたりの描写もなかなかに迫力があります)、船を出て大きな氷の上で28人で野営を始めます。
南極大陸じゃなくて氷の上ですよ。
信じられません。
11月には南極大陸の大地を踏めないまま、ついに船が沈没してしまいます。
氷にやられた船としてはタイタニックが有名ですが、あちらは氷山に衝突して瞬く間に沈没してしまいますが、エンデュアランスの方は、流氷に圧迫されて数か月かけて沈没していきます。
じわじわ船がダメになっていく、こっちもかなり怖い・・・。
その後、翌年4月にキャンプをしていたところの氷が割れるまで半年以上、みんなで氷の上で生活です。
アザラシやペンギンを捕獲して食べたり、アザラシの脂を使って火力にしたり、残った物資を器用にDIYしたりして(ほんと、みんなDIYの最上級者!)サバイバル生活を続けます。
氷が割れてその上で過ごせなくなったのを機に、エレファント島に上陸しますが、ここがまた絶海の孤島。
大地があるだけで人が住めるような状態ではありません。
そこでもまた野営。
その後、エレファント島に22人残り、シャクルトンたち6人が頼りないボート(↓)で救援を求めに行き
そしてそして
最後は全員生還します
なんと短い人で17か月、長い人(島で救援を待っていた人)で22か月も南極に孤立してたのに、本隊の28人は全員無事に生還したんです!
シャクルトンたち6人が小さいボートで、野営していたエレファント島から救援を求めに行ったのが、サウスジョージア島なんですが、地図で見てもかなり離れています。
間に島らしいものも何もなくて・・・想像するだに恐ろしい (--;)
本当に、100年間語り継がれるだけのことがある、びっくりな展開です。
苦難のときこそ笑顔で平常心
長期間の過酷な環境での孤立生活の後、みんな無事に生還という事実も驚きなんですが、読んでいて心底驚いた、というか感心したのが、こんな過酷な状態でも
みんなが希望を捨てず、陽気に過ごしたということ。
私が同じ状況だったら、3日ほどで絶望してくたばっていたことでしょう。
シャクルトンは自分が5人を連れて救援に向かっている間、エレファント島に残って、22人をひっぱっていたシャクルトンの右腕ワイルドを、本書で褒めたたえています。
この長い残留期を全員が愉快にすごし、そしてほんとうに元気な姿でもどってこられたのは、ワイルドの活動力と指導力、それに機知によるところが大きかった。
~中略~
彼(ワイルド)がそばにいれば、沈みがちな心もいつしか消え、元気がわいてくる。
悪魔に魅入られたようなふさぎこみ、かなくなになった心も晴れてくるのだ。
「命令」することだけに満足せず、彼はほかの者と同じように「活動」し、またしばしばそれ以上に働いた。
彼はおどろくべき指導力を発揮して、彼によせたわたしの絶対的な信頼によくこたえてくれた。
これはそのまま、隊長のシャクルトンにも当てはまることでしょう。
彼が隊員たちに尊敬され、信頼されていたんだろうなというのが、伝わってきます。
困難な局面でも平常心を保ち、チームを明るい雰囲気にする。
そして、大きな難を小さな難に変えて、難局を乗り切っていく。
こんなシャクルトンやワイルドの行動が、リーダーシップのお手本として読まれているんでしょうね。
おわりに
南極大陸横断という最初の目的は、シャクルトンたちは南極大陸にも到達できなかったので、大失敗といっていいでしょう。
しかし、22か月も孤立して30人近い人が全員無事だったのは、奇跡といっていいほどの大成功!
『沈没していたエンデュアランス号が発見された』というニュースを目にしなければ、知らないままだった物語でした。
リーダーシップのお手本としてだけでなく、純粋に冒険譚としても楽しめ、人間の能力の底知れなさも感じられる本でした。
そして、大失敗な中からの数々の苦難を乗り越えての大成功という意味では、映画『アポロ13号』にも通じるものがあると感じました。
原著はかなり大部のようで、あとがきに『専門的な記述とあまりに微細な内容は多少省略し、摘役にとどめた』とあります。
その分、コンパクトで、でも、冒険の素人には十分に満足できる内容になってます。
戦争の話など、悲惨なニュースが多い中、人間の力を信じられる本を読んで元気を出しましょう♪
ということで、今回はいろんな意味でびっくりした『エンデュアランス号漂流記』の感想&ご紹介でした!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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