すごい小説に出会ってしまいました。
村田沙耶香さん著の『世界99』です。
オーディオブックで聴き終えたところなんですが、まだ世界観から抜け出せていません。
この小説をどうとらえたらいいか?
よく分かりませんが、現代社会への問いかけが強烈です。
どこかの解説に『壮大な思考実験』と書かれていましたが、そうかも。
でもディテールは現実でもよく見聞きする内容だし、どうなんだろう?
まだ、衝撃から抜けきれず、もやもやしているんですが、それも含めて感想を書きます!
/こちらもかなりな衝撃だった/
↑ぜひ読んでほしい作品↑
あらすじ
上下巻の長編で、あらすじも一筋縄ではいかないのですが、物語の舞台はクリーン・タウンで、主人公は自分には『性格』がないと考えている如月空子です。
もうこれだけで、不穏な空気が漂っています。
自分が空っぽと認識している空子(そらこ)の特技は『呼応』と『トレース』。
それらを駆使して、その場その場で相手やコミュニティに合わせた適切な人格を演じています。
家族の前では『そらちゃん』、学校では『キサちゃん』、別の友達の前では『プリンセスちゃん』など、複数のキャラクターを使い分けて小さな頃から生活しています。
空子はこれを『世界に媚びる』生存戦略として意識的に行っており、自分を『人間ロボット』だと表現しています。
相手が求める理想的な人間を演じることで、『安全』と『楽ちん』に生きることを目指しているのです。
空子は『クリーン・タウン』というニュータウンで、母親と謎の生き物ピョコルンと暮らしています。
父親は赴任中で家にはいません。ピョコルンや空子の世話はお母さんに丸投げしています。
この街は『過去がなくて公平な街』とされていますが、やがて差別感情が生まれていきます。
特に、ラロロリン人という特殊なDNAを持った人たちに対しては、彼らが優秀なだけに嫉妬と警戒心を抱かれ、社会的な排除の対象になっていく過程が上巻では描かれます。
ストーリーの序盤から、重要なキャラクターとして登場するのが空子の同級生白藤さん。
空子の友人である白藤さんは、空子とは対照的に強い意志を持ち、正論を貫き通そうとするタイプです。
彼女は空子の行動を『二重人格』『八方美人』と批判しますが、実は白藤さん自身も憧れの大人を模倣しているという矛盾を抱えています。
この白藤さんは、物語の最後まで関わってきます。
大人になった空子は仕事先の部下・音(おと)ちゃんとの関係を通じて、『本当の自分らしきもの』を発見します。
それが、すべての人格を後ろから冷静に見ている自分、世界99です。
空子は複数に分裂した世界を管理し、それらすべてを俯瞰する存在として自分を位置づけるようになります。
この物語のキーとなる脱力系の名前の謎の生物、ピョコルン。
ピョコルンは、パンダ、イルカ、うさぎ、アルパカなどの遺伝子が組み合わさって作られたとされている人工の生き物です。
最初は高級ペットとして扱われているんですが、上巻のラストで死んだ人間のリサイクルだったという衝撃的な事実がわかります。
うちのチャットGPTが生成したピョコルン↓
多分、小説とは違う感じ(^^;)

物語が進むにつれて、ピョコルンは技術の進歩により進化していきます。
最初はペットだった存在が、家事を担い、人間の性的な対象となり、妊娠・出産まで可能になります。
これにより社会構造が大きく変化し、友情婚が当たり前となり、ピョコルンに子どもを産ませることが豊かさの象徴となっていきます。
そしてラストでは、主人公の空子がピョコルンになるための手術を受けるというカオスな状況に!
奇想天外なディストピア小説だが妙に現実感あり
改めて、あらすじを書くと奇想天外なディストピア小説に見えるのですがこれが妙にリアリティがあるんです。
ふわふわ生物『ピョコルン』や、良くも悪くも特別な『ラロロリン人』といった非現実的な設定がありながらも、主人公の空子が幼少期から大人になるまでのストーリーの中に、差別や性暴力、ジェンダー問題といった、現代社会の問題が織り込まれています。
そう、これは現実に限りなく近いディストピア世界の話なんです。
空子みたいに、その場の雰囲気や相手によって、話す内容やキャラを多少変えたり、求められることを話そうとすることは、多少の差はあれ、誰にでもちょっとはある傾向と思います。
私もあります。
けっこうあります。
また、保身のためにいじめる側に回ったり、楽をしようと搾取する側に回ることも、意図しなくてもあると思います。
大きなところでは、労働力の安い海外で製造された製品を安価で使ったり、身の回りの話では家の中での家事労働が女性に集中していたり・・・。

家事労働や子を産むことなど、これまで女性が担ってきた大変な労働の部分は、途中から全部、ピョコルンが担ってくれるようになります。
が、ピョコルンもただの便利な道具には収まらず、飼っている人間が逆にピョコルンに金銭的にも体力的にも(ピョコルンのお世話は結構大変)、精神的にも追い詰められていくシーンもあります。
社会的強者である男性が安泰かというと、そうでもなく、家族やピョコルンを養うために夜遅くまで仕事に明け暮れる男性も何人か出てきます。
その男性たちを、道具がんばれ!と応援したり・・・。
男性と女性の不平等、不均衡を鮮やかに描きつつ、それぞれの苦しさも丁寧に書かれています。
AIが進化して、面倒なことを一気にやってくる未来がきても、一方でAIに気を使ったり、高い高性能なAIを買うために過酷な労働をする、という何やってるねん!な日がくるかもしれない、とゾッとしました。
高性能のルンバを買うために過酷な労働をし、しかもルンバに気持ちよく働いてもらうために気を遣う、みたいな!?
どっちに転んでも搾取されたり、追い詰められたりする世界、どうにかならんのかな。
汚い感情のない『クリーンな人』
最近は昔に比べて、差別的な言動はもちろん、相手に負の感情を抱かせないよう、発言や行動に気を付けることが多くなりました。
自分が怒り・嫉妬・悲しみなどのマイナスの感情を抱いた場合も、そうした感情は早く手放そう、とよく言われます。
この小説ではさらに進んで、怒りや憎しみを捨て、良いことしか言わない『クリーンな人』というのが出てきます。
子どもは、周りで怒っている人を見たことがないから、自分の怒りを表現するとき、カラスの真似をするという恐ろしい状況も描かれています。
負の感情の排除を求めすぎると、感情はいらないみたいなことになるのではないか、それでも感情はちょっとは残るだろうから、その感情のはけ口に動物的なことをするのではないかと怖くなりました。
おわりに
村田沙耶香さんの本は芥川賞を受賞した『コンビニ人間』を、先日、オーディオブックで聴き、それがとても興味深かったので、その流れで『世界99』も聴きました。
オーディオブックで上巻&下巻、合計27時間超
紙の本では合計860ページ超という、かなりな長編で、最後までちゃんと聴けるかなと不安だったのですが、そんな不安は杞憂でした。
衝撃的&印象的な言葉や内容が多く、何よりその世界観が恐ろしい。
恐ろしいけど、現代と通じているところがとても多いように感じます。
そんな世界を構築した、村田沙耶香さんの才能も恐ろしいです(めっちゃ称賛の言葉です✨)
かなり分厚くて読み始めるのに勇気がいりますが、ぜひぜひ、読んで欲しい小説です。
ではでは
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