27年間にわたって連邦最高裁判事の座にあり、先日、亡くなったルース・ベイダー・ギンズバーグ判事の前半生を描いた映画『ビリーブ』を、アマゾン・プライムビデオ(Amazonプライム・ビデオ)で観ました。
すごく良かったので、忘れないうちに感想をかいておきます♡
実はプライム会員無料ビデオではなく有料。だが観る価値あり♡
この作品、実はたくさんあるプライム会員無料のビデオではなく、300円の有料ビデオなんです。
300円で48時間レンタル可能。
これが一般的に高いかどうかは微妙ですが、この『ビリーブ』に関しては、300円の価値ありです。
でも、とってもいい作品で、もっとたくさんの人に見て欲しいから、はやく無料になって欲しいな~と思っています。
*アマゾン・プライムビデオのレンタルの方法はこちらの記事でどうぞ!
ストーリー
ストーリーに入る前に、ちょっとタイトルの説明から。
このビデオ、邦題は『ビリーブ~未来への大逆転』という、ちょっと引くようなタイトルなんですが、原題は『On the basis of sex』というシンプルなタイトル。
直訳すると『性別に基づいて』というような感じでしょうか。
この原題が内容を表しています。
ストーリーは、先日お亡くなりになったアメリカの最高裁判事、ルース・ベイダー・ギンズバーグさん(ちょっと名前がダース・ベーダーっぽい)の前半生の物語です。
ルースさんという実在の人物が主人公ではありますが、娘さんとの関係などは、だいぶ脚色が入っているようです。
すでに夫と赤ちゃんがいて、家庭を持ちながらの超多忙な学生生活を送っています。
夫は同じロースクールのマーティン。
映画では夫は超イケメンで仕事の能力も高く、家事がバリバリで親切な人物に描かれています♡
\実際のルースと夫のマーティン♡/
画像引用元:ウィキベディア
ハーバードのロースクールでの生活は過酷。
当時、女性が超少なくて(500人中9人くらい)、歓迎会の時点で『男性の席を奪って入ってきた』という扱いをされるくらいな逆風です。
そんな中、夫のマーティンが若くしてガンになります。
ルースは夫の看病と娘の育児を一手にひきつけつつ、自分の授業も夫の授業も出て優秀な成績をおさめるというスーパーぶりを発揮。
そこらへんは、けっこうさらっと描かれています。
2年後、マーティンのガンは寛解し、マーティンは法律家の最も活躍できる都市であるニューヨークの法律事務所に就職が決まります。
ルースは夫と一緒の生活を希望し、学部長とちょっと言い争った末、ニューヨークにあるコロンビア大学に移籍することになります。
ルースはそこでも、優秀さを発揮。
コロンビア大学を首席で卒業するものの、女性であることが原因で、法律事務所へ就職することができませんでした。
画像引用元:ギャガ公式チャンネル・『ビリーブ』予告編
実務法曹として活躍したかったけど、事務所への就職が決まらないルースは、やむなくラトガース大学の教授になり、未来の法曹を育てるようになります。
しばらく時は流れ、1970年のある日、夫のマーティンが面白い案件を持ち込んできました。
チャールズ・モリッツという男性は、働きながら母親を介護しているのですが、看護師を雇ったところ、未婚の男性であるという理由で、母の介護のために雇った人の分の所得控除が受けられなかったのです。
その根拠となる法律(マーティンの専門の税法関係の法律)では、女性や妻と死別した男性、離婚した男性等は控除を受けられるのですが、一度も結婚したことがない男性(←モリッツみたいな人)は控除はダメ。
『モリッツさんが、1日でも結婚してて離婚したら控除を受けられるのに、受けられないなんて、おかしいやん』
ルースが教えている大学の学生たちも、そう考えます。
法律における男性への性差別が是正された前例ができれば、女性の性差別の是正を目指す際に大きな助けになる。
控訴審の裁判官は男性ばかりだから、男性の性差別の方が共感しやすいはず。
そう考えたルースは、アメリカ自由人権協会のメル・ウルフや公民権運動のレジェンドな女性弁護士ドロシー・ケニヨンらの協力を得て、モリッツさんの介護費用の控除を勝ち取るべく、控訴をします。
ルースの敵は100年間積み重なってきた、男女の扱いを別にする法律は違憲ではないとする前例。
100%負けると言われていた裁判ですが、夫をはじめ、みんなの協力を得て、大逆転の勝利に至るというお話です。
わたしはここが好き
びっくりな時代背景
まず最初に、ルースがロースクールに入学する1956年から物語は始まるのですが、その頃って、名門ロースクールに入るのは女性が少数というのは想像できたんですが、歓迎会の席で学部長(←見識ある立場の人)に『男性の席を奪って入学』云々いわれてしまうというのはびっくり。
法廷闘争を繰り広げる1970年代も、まだ女性は自分の名前でクレジットカードを作れないし、仕事を選べない(女性の仕事は看護師、教師、秘書などに限られていた)なんて~。
明治初期の話ではなく、たった50年~60年ほど前ですよ~。
そうした背景がリアルに描かれていて、興味深かったです。
ちなみにこの頃は、男性も今以上に家計の主たる担い手であることを求められていて、窮屈そう。
教師や看護師は『女の仕事』ということで、男性は締め出されていたみたいです(^^;)
このあたりのエピソードをみていて、学生時代に法律の講義できいた日産自動車の男女定年差別についての最高裁判決を思い出しました。
これは
定年年齢を男子60歳、女子55歳と定める会社の就業規則が、性別による不合理な差別を定めたものとして、民法90条により無効とされた判決
で、昭和56年に出されたものです。
わたしが生まれた後じゃん。
この最高裁判決では、女子従業員各個人の能力等の評価を離れて、その全体を会社に対する貢献度の上がらない従業員と断定する根拠はないとされたようなんですが、『貢献度が上がらない』とかなんとかを、男女の年齢で差を設けるって、今からすればすごい発想ですよね~。
いや~、こわいこわい。
『ビリーブ』でも、ルースがメインでやっている訴訟と並行して行われていた、男女差別に関するリード夫妻事件でも、『女性は計算ができない』という理由で、女性側がどえらい財産上の不利益をうけることになっていました。
こうしたことがわずか数十年前のことというのを、改めて思い出させてくれました。
娘との関係がいい
主人公のキャラクター設定も、頑固で料理下手(多分)、実務慣れしていないので口頭弁論もへたっぴというところも、親しみがわいて好きなんですが、自分の子どもが女子のせいか、娘さんとの関係がぐっとくるものがありました。
このあたり、かなり脚色がはいっているようですが、この映画のいいところだと思います♡
あまりに頭のいいルース・ママに引け目を感じ、自信が持てないジェーン(長女)。
お母さんの発言を、ついつい『いじわる』ととらえてしまいます。
一方、ジェーンは学校をさぼってフェミニストの集会(?)に参加するような活発さもある子で、自分なりの考えを持っています。
お互い頑固で、すぐに言い争いになる2人。
そんな彼女が、母のルースに『時代は変わった』と気づかせる役割を担っていて、ルースに控訴審で法廷に立つ決断をさせるんです。
法廷では、ルースは単に介護費用控除の訴訟に勝つためだけではなく、ジェーンのような次の世代の未来を切り開くための訴訟であることを判事たちに訴えていきます。
『国を変えろとはいいません。国は勝手にかわります。
国が変わる権利を守って欲しいんです』
と法廷で述べる姿がかなりカッコいい♡
今だからこそ観て欲しい
最近、自国中心の保護主義っていうんですか、そんなのがはびこっていて、特に政治の世界では、自分の持ってる価値観以外を排除するような雰囲気を感じます。
特に、お偉いさんたちは、自分(たち)がよければそれでいい的な感じ。
そんなこんなで、弱者にしわ寄せがいって、日本でも貧富の差が広がってしまっている悲しい現状。
『ビリーブ』の頃より、男女格差は(少なくとも法律上では)なくなっているとは思いますが、一方で、正規社員と非正規社員の格差とか、いろんなところで差別や不合理な取り扱いの違いというのは残っていたり、新たに生まれている気がします。
そんな中だからこそ、『100年前に負けたって、今、負けるとは限らない』と、力ずよく100%負けるといわれた裁判にいどんでいくこの話は、観る価値があるんじゃないかな~。
ルース・ゲインズバーグさんの映画は、もう1本、ドキュメンタリー(←こっちの方が有名)があるんですが、そっちもまた観てみようかなと思っています♡
↑ こっちもアマゾンプライムで300円レンタル(^^;)。なんとか無料にしてほしい!
みなさんも興味があったら、ぜひ、ルース・ギンズバーグさんの物語をみてみてください。
アメリカでキャラクターグッズが売られるほど人気なのも、分かる感じです♡
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました♡