朝井リョウの『イン・ザ・メガチャーチ』を読了したので、早速、感想を書きます✨
まとめを先に書くと
『イン・ザ・メガチャーチ』は、 単なる『推し活界隈』の物語ではありません。
人はなぜ“物語”に惹かれるのか。
なぜ、何かを信じずにはいられないのか。
そんな現代人の根っこにある不安や空白を、容赦なく突きつけてくる作品です。
今の社会の“歪み”なのか、“リアル”なのかもわからないものを、そのまま切り取った作品という印象で、作者の現代社会に対する解像度の高さにびっくりです😳
/今回はKindleで読みました/

登場人物は、特別な人たちではありません。
むしろ、どこにでもいそうな人ばかり。
だからこそ読者は、『これは自分かもしれない』と感じてしまう。
読み終わっても、答えは出ません。
むしろ、モヤモヤは残ります。
でもそのモヤモヤこそが、この作品の価値。
考えることをやめさせない力がある気がしました。
これまで朝井リョウの作品は、エッセイを中心に読んできており、小説で読んだのは『正欲』だけでした。
『正欲』も衝撃的でしたが、今回もまた、違う意味でやられました。
エッセイで感じていた“面白いお兄さん”という印象とは、全く別。
いい意味で裏切られました。
正直に言うと、『面白い』『興味深い』を超えて、『ちょっと怖い』作品でした。
何かがおかしい——そんな不穏な空気が小説全体に流れていたように思います。
この物語は
★久保田:レコード会社勤務でアイドルグループの運営に参加
★澄香:久保田の娘。大学での居場所が見つからず、孤独を抱える
★絢子:俳優の熱心なファンだが、その俳優が自殺してしまう
を中心に展開します。

画像引用元:朝井リョウさんのX
この3人を中心に展開はするのですが、他にも年齢も立場もさまざまな人たちが描かれています。
読む人が自己投影できる人が一人はいるんじゃないかな。
そして私自身は、ストーリー展開そのものよりも、 登場人物たちの発する言葉に何度も引っかかりました。
読んでいて
『ドキッ😳』
『それ、言っちゃう?』
『でも、わかる・・・』
『酷い・・・』
そんな感情が何度も押し寄せてきました。
本の帯にもなっている
神がいないこの国で人を操るには、“物語”を使うのが一番いいんですよ。
(p184から引用)
宗教的な“神”がぼんやりしている今の日本で、 『信じる対象』が何に置き換わるのか、を突きつけてくる印象的な一言ですよね。
推し活
コミュニティ
SNS
インフルエンサー
有名ブランドのブランド・ストーリーもそうかな?
—— 私たちは知らないうちに、“物語”に惹かれ、その中で安心&満足し、そして影響を受けている。
そう思うと、この言葉、ちょっと怖くないですか?
そして、こんな一節も。
今って本当に、人生の指針がないですよね。幸せの形は人それぞれって言えば聞こえはいいですが、あらゆるパターンの人生が可視化されていて、これまで提唱されてきた生き方の正解とか成功の条件みたいなものは、ただの幻想だってことが知れ渡りました。どのパターンの人生でも穴があるんです。家庭を持っても今の日本じゃ将来苦しくなるだけとか、お金や理協力を手にしても虚しいだけとか、もう長生きしたって辛いだけとか
(p378から引用)
引用は2つとも、国見さんという久保田パパと同じアイドル運営サイドにいる人が言った言葉ですが、読んだときに思わずページを閉じそうになりました。
なぜなら、 あまりにも“今の現実”そのままだから。
昔、私が高校生、大学生だった頃は、社会全体で共有されている『こうすれば幸せになれる』というモデルが、一応、残っていた気がします。
いい学校に行って、いい会社に入って、結婚して、家庭を持つのが、幸せという。
当時から、それだけが幸せではないという話は、たくさんされていましたが、スタンダードな幸せルート概念があって、それを基準に、そこからどう外れて自分なりの幸せを掴むのかに試行錯誤していた気がします。
でも今は、そうした“絶対の正解”ではなくなった。
そしてSNSによって、『どの人生にも裏側がある』ということまで、誰でも見えてしまう時代になっています。
だから、私たちは迷うんですよね。
何を選べばいいのか
何を信じればいいのか
どこに居場所を作ればいいのか
この作品を読んでいて感じたのは、『正解がない時代』だからこそ、人は“物語”にすがるのかもしれないということ。
そしてその“物語”は、時に人を救い、 同時に、簡単に飲み込んでしまう危うさも持っている。
50代の私ですら、こうやって考え込んでしまうのだから、 もっと若い世代にとっては、さらに切実な問題なんだろうなと思います。
先ほど、この小説には、いろいろな立場でさまざまな年齢層の人が登場すると書きました。すでに読まれた方は、誰に一番、感情移入したでしょうか?
私は久保田パパに最も感情移入しました。
男女の差はあれど、年代が似通っていて(久保田パパの方が若いけど)、同じ年頃の娘を持つ身。
仕事の上では、自分の行く末も見えている年齢です。
人生の折り返しを過ぎ、 これまでを振り返り、これからを考える年代。
『あの時どうしていたら』
『これでよかったのか』
これまで歩んできた人生の中で、やってきたこと、やってきていないことを考える。
そんな彼の思いに、強く共感しました。
そしてこの作品、最後がまた絶妙です。
救いがあるのか、ないのか——わからない。
スッキリしない。
でも、そのモヤモヤが残るからこそ、考え続けてしまう。
もう一度読みたくなる不思議な力がある。
そして、『誰かと話をしたくなる本』でした。
すでに話題の一冊ですが、 まだ読んでいない方にはぜひおすすめしたい作品です。
きっとどこかに、 自分と重なる登場人物が見つかるはず。
そして、今、私たちが生きているこの世界についても、今までとはちょっと異なる視点で、より鮮やかに見えてくるかもしれません。
私は正直、まだ、この小説を消化しきれていない気がするので、次はオーディブル版で聞いてみようかなと思ってます。
よかったらみなさんの感想も教えてください!
ではでは
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