67万部の大ベストセラーになった『ケーキの切れない非行少年たち』。
以前、読んでちょっと批判的な感想を書きました(↓)。
みなさんご存じ『ケーキの切れない非行少年たち』は、児童精神科医である著者・宮口幸治さんが、医療少年院に勤務していた際、多くの非行少年と接する中で、『反省以前の子ども』が沢山いることに気づく、という本です。
わたしが不満だったのは、以下の点。
少年院には認知力が弱く『ケーキを等分に切る』ことすらできない非行少年が大勢いたこと、境界知能の子も沢山いたことなど、現状分析に重きが置かれ、同じ内容のことが繰り返し書かれていました。
わたしが知りたかったのは、『それで、困っている子を困らないようにするには、どないしたらいいの』というところだったのですが、そこはサラッと触れる程度。
新書一冊使って書く内容としては、薄いんじゃないかな~と思ってしまったんですよ。
で、2021年4月に出版された、宮口さん著の ケーキの切れない非行少年たち 2 『どうしても頑張れない人たち』はどうかな~と思って、読んでみました。
『どうしても頑張れない人たち』の感想は?
この本も、書店に平積みになっており、アマゾンなどの★の評価もなかなかのものです。
▼なかなかの人気です▼
でもね、結論からいうと、わたしとしてはやっぱり、物足りない感じでした。
いいことをいってはいる
とは思うんです。この本では、いろいろいいことも言っています。
例えば、よく言われる『頑張る人を応援します』という言葉。
これは裏を返せば、『頑張らなかったら応援しない』といことともとれます。
そもそも頑張れない人たち、怠けてしまう人たちにこそ、本当は支援が必要
であり
怠けているからこそ応援しなければならない
そのとおりだと思います。
頑張ったら応援するというような、条件付きの支援は好ましくないでしょうから。
周りを困らせる困った人こそ、本人がとても困っている人で、最も支援を必要としているというのは、よく教育現場などではいわれていることです。
『ケーキの切れない非行少年たち』に紹介されたような認知機能の弱さを持った人たちを、いろいろな要因で『頑張ってもできない子』もいます。
そういう子たちは
頑張ってもうまくいかず、失敗を繰り返し、次第にやっても無駄だと感じるようになり、頑張れなくなるのです。
特に『頑張ればできる』という風潮がはびこっている現在では、頑張っても成果がでないと、『頑張りが足りない』『頑張れない自分はおかしい』など、自分が悪いと考え、意欲が低下する場合も多いでしょう。
知的障害児では、失敗経験を繰り返すことで、成功への期待感を低下させ、もっと上手くできる方法はないかといった工夫を次第にしなくなってしまうという国内外の研究報告もあります。
納得の内容です。
では、頑張れない人たちを頑張れるようにするにはどうするか?
『頑張れる』を支える3つの基本
家族でも先生でも、『頑張れない人たち』を支援する支援者の基本として、宮口さんは3つの基本をあげています。
それは
安心の土台
伴走者
チャレンジできる環境
です。
少年にとって重要な大人(=家族や教官)とのかかわりの中で、安心感(=安心の土台)と寄り添ってくれる大人(=伴走者)の存在を得ることで、彼らははじめて新しい自分に変わりたい、新しいことにチャレンジしたい(=チャレンジできる環境)と望むようになり、変わっていったのです。
ここでいう『安心の土台』というのは、『頑張ったら支援する』という条件付きのものではなく、支援者を充電器に例えると、頑張れなくても、事故を起こしても、何があっても安定して電気を供給できる人です。
また、『伴走者』というのも、『やるといっても仕事に行かない』『すぐに投げ出す』『自分勝手なことばかりいう』人たちを、辛抱強く見守ってあげ、ずっと支援し続ける人のことです。
それがいいのは分かるのですが・・・
『安心の土台』や良き『伴走者』になるのはとても難しい
そう。
『安心の土台』や、相手がわがままを言ってもずっと、安定して見守り続ける『伴走者』になるのは、とっても難しいと思うんです。
だって、自分の子どもでも、仕事の後輩などに対してでも、自分がそうなっているか、そうなれるかというと、自信ないですもん。
自分がいろいろサポートしたつもりでも、それが上手く結果に結びつかず、サポートした相手(職場の後輩とか)が、結果を気にせずヘラヘラしていると、イラッとしてしまい顔に出てしまったりもします。
そうした感情コントロールのために、アンガーマネジメントやいろいろな方法が開発されてきているんですが、いずれにしても、『安心の土台』として、また『伴走者』としてうまく機能することは、とってもとっても難しいです。
わたしが『どうしても頑張れない人たち』を物足りないと思うのは、支援する人の心構えものの見方を示してはいても、『安心の土台』や『伴走者』になるには、具体的にどうすればいいのかが示されていないことなんです。
さらにいうなら、安心の土台や伴走者といったことも、今までもよくいわれていることであり、さほど目新しい内容ではない気がします。
おわりに
宮口幸治さんの本、わたしにはあまり合わないみたいです(--;)
でも、『どうしても頑張れない人たち』はアマゾンの星の数が多いし、特に、『ケーキの切れない非行少年たち』は社会的にも広く話題を振りまいていたし、みるべきところがある本なんでしょうね。
あ、今回の『どうしても頑張れない人たち』はコグトレ色が薄いので、コグトレに抵抗感がある人も安心して読めます。
(コグトレ(Cognitive Training)Cognitive Training)=認知機能トレーニング)
すでに教育や心理、福祉関係の本などを読まれている方には、物足りないかもしれないですが、そうしたものをこれまであまり読まれていない人には、同じようなことが繰り返しかかれているので(←嫌味じゃないです(^^;))、読みやすくていいかもしれません。
ちょっと批判的なことを書いて、小心なわたしはドキドキしていますが、最後までお読みいただいて、ありがとうございました!
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*2冊ともわたしは合わなかったですが、話題の書で評価も高く、いいと思う人も多いんだろうな~